スマートシニア・ビジネスレビュー 2012年1月29日 Vol.174
という記事が一面トップで掲載されていました。
皆さんはこの記事を見てどのようなことを感じたでしょうか?
私の周りの人たちからは、
「100兆円もあるの?やっぱりシニア市場は大きいね」という反応があった一方で、
「高齢者を見ていると生活がつましくてピンとこない。
どこに100兆円もの市場があるんだい?」
という反応もありました。
そこで今回のレビューでは、
この「シニア消費100兆円」の詳細を解説しました。
シニア消費を理解するカギとなる役立つ数値も多く掲載しており、
シニア消費に関心のある企業担当者の方は必読です。
先の日経新聞で引用している
第一生命経済研究所の推計によれば、
2011年の60歳以上の消費(シニア消費と定義)は、
101兆2000億円とのことです。
一方、国連の World Population Prospects:
The 2010 Revisionによれば、
2011年度の日本の60歳以上の人口は
3901万人となっています。
これらの数値を元にすると、2011年度の
60歳以上一人当たりの年間消費推計額は
1012000億円/3901万人=257万5千円
=214,600円/月となります。
何だ、100兆円と言っても、一人当たり月21万5千円弱か、
大したことないなあ、と思われるかもしれません。
果たしてこの数値は妥当なのでしょうか?
総務省統計局「家計調査報告」平成22年によれば、
世帯主が60歳以上の世帯の消費支出は
次の通りとなっています。
1. 勤労者世帯(60歳以上の世帯の15.2%)
315,212円/月(消費性向92.9%、黒字率7.1%)
ここで勤労者世帯とは、世帯主が会社・官公庁・
学校・工場・商店などに勤めている世帯のことをいいます。
2. 無職世帯(60歳以上の世帯の67.8%)
207,302円/月(消費性向129.4%)
①うち単身無職世帯(26.1%): 145,963円/月(消費性向124.8%)
②うち高齢夫婦無職世帯(23%): 234,555円/月(消費性向121.3%)
これらから、第一生命経済研究所の推計と
国連の人口推計から算出される
60歳以上の人一人当たりの消費214,600円/月は、
最新の家計調査報告の数値
(勤労者世帯315,212円/月と無職世帯207,302円/月)
の間にあることがわかります。
60歳以上の世帯のうち、無職世帯が全体の67.8%、
勤労者世帯が全体の15.2%であることを考慮すれば、
214,600円/月という数値は妥当であると言えましょう。
だとすると、一方で
「60歳以上の世帯の消費は
月に214,600円しかないのか?」
という疑問が湧く方も多いでしょう。
答えはNOです。
先に挙げた通り、同じ60歳以上の世帯でも、
勤労者世帯315,212円/月と
無職世帯207,302円/月では、
実に107,910円/月もの差があるのです。
要するに世帯主が働いていて、
それなりの収入がある場合とそうでない場合とでは
消費支出に大きな差が出るということです。
しかも、注意したいのは、勤労者世帯は消費性向92.9%、
つまり月の収入が支出を上回って収支が黒字なこと。
これに対し、無職世帯は消費性向129.4%、
つまり月の支出が収入を上回って収支は赤字。
不足分は預貯金の取り崩しで賄っているのです。
さらに、次のページの図表2-3をご覧ください。
この図表は厚労省国民生活基礎調査による
高齢者世帯と全世帯の年間所得の分布を示しています。
(ここでは高齢者世帯は世帯主が65歳以上の世帯)
グラフの数値は2004年調査のものですが、
最新の調査である2010年のものと比較しても
傾向はそれほど変わっていません。
この図表から言えることは、
高齢世帯の所得は世帯によって異なることです。
私がかねてから著書や講演で申し上げている通り、
高齢世帯の消費形態は多種多様であり、
十把一絡げでは語れないのです。
シニア消費は確かに100兆円を超えています。
しかし、だからといって、すぐにシニア消費が
貴社商品の消費になるわけではありません。
自分の会社の商品・サービスは、
誰をターゲットにするのか、
誰にリーチできるのかを
周到に考えなければいけないのです。
●参考
多様なミクロ市場の集合体 - マス・マーケットではない団塊・シニア市場