シニアシフトと業界の取るべき方向性 (1)ファミリーレストラン

販促会議9月号 連載 実例!シニアを捉えるプロモーション 第七回

販促会議9月号表紙高度成長期に業績を拡大してきた企業には、いまだに若者やファミリー層を主要ターゲットにしているところも多い。年々売上げ減にさらされているにもかかわらず従来のビジネスモデルからなかなか脱却できていない業態の一つがファミリーレストランだ。こうした業態では、シニアシフトの進展に合わせて新たな方向性が求められている。本稿ではその勘所を述べる。

 

1.退職シニア層には「第三の場所」の機能を提供する

 

ファミリーレストラン最大手のすかいらーくが、約1300店ある「ガスト」を2014年から4年間で130億円を投じて全店改装する。改装の柱はシニア層への対応だ。4人がけのボックス席は背もたれを高くし、個室感覚で使えるようにし、内装も落ち着いた木目調などにするとのことだ。

 

しかし、せっかく多額の投資をするのであれば、退職シニア層のニーズをとらえた本質的な改装に踏み込むべきだ。そのカギとなるのは「退職者のための第三の場所」の機能である。

 

「第三の場所」とは、かつて社会学者のレイ・オルデンバーグ(Ray Oldenburg)が、自著「The Great Good Place」の中で家庭(第一の場所)でもなく、職場(第二の場所)でもない「第三の場所」が社会的に重要な機能を担っていることを指摘したことで有名になった言葉だ。

 

私はこの言葉を発展させ、「退職者のための第三の場所」が今後、広く求められていくことを10年前から提唱してきた。このコンセプトは、大きな反響を呼び、シニア向けカフェなどのサービスに反映されてきた。近年コメダ珈琲などのシニアをターゲットにしたカフェが増えているのは、まさにこの機能を提供していることに他ならない

 

しかし、「退職者のための第三の場所」は、カフェだけが唯一の形態ではない。「退職者のための第三の場所」の本質は、会社を辞めて毎日行く所のなくなる退職者のための社会的居場所だ。だからカフェ以外のいろいろな形態が考えられる。従来のファミレスは、この社会的居場所の受け皿になることで成長市場となる可能性がある。

 

自宅以外の書斎・知的作業スペース、打合せスペース、同窓会・勉強会会場、懇親会場などいろいろな機能が考えられる。実はこうした機能は「銀座ルノワール」がコーヒーショップを基軸に展開してきたものだが、ファミレスの今後の方向性としても十分可能性がある。

 

9月号2.少人数グループには「小口化対応」を徹底する

 

従来のファミレスでは名前の通りターゲットが人数の多いファミリー層だった。このため、六人がけのテーブル席が圧倒的に多く、少人数の客には使いづらかった。しかし、今後はシニアシフトに伴い、単身世帯や高齢夫婦二人世帯の増加が見込まれるので、こうした少人数グループへの対応が必要だ。

 

具体的には、①二人掛けテーブルの割合を増やす、②単身世帯向けにカウンター席も用意する、③高齢夫婦世帯向けの量より質を重視したメニューを増やす、などが必要だ。

特に③については、従来のファミレスメニューは子供や若者が好むハンバーグ、スパゲティ、カレーを中心とした高カロリーで味の濃いものが多かった。

 

高齢夫婦世帯にはこれらに対し、焼き魚や煮魚、野菜が多めの和食メニューが好まれる。定食チェーンの「大戸屋」は、実はこうしたメニューが中心で、シニア層のみならず、若年層の利用も多い。

 

3.単身顧客には夜にバランスのとれた食事が手軽に取れるデリがうける

 

ファミレスが成長したのは、1970年代後半から80年代の高度成長期末期。かつては滅多に行けない非日常のぜいたくだった外食を手頃な価格で大衆化することで成長した。

 

しかし、こうした高度成長期の成功事例の共通点は、マス・マーケットを対象とした画一型商品の大量販売である。経済成熟、もの余り、デフレ時代には、こうした画一型商品は真っ先に淘汰される。

 

シニアシフトの進展で単身世帯が増えている。これには高齢の未亡人だけではなく、高齢になる未婚独身層も含まれている。一方、若年層の単身世帯にはビジネスパーソン、OLが多い。

 

いずれの層にも共通しているのは、健康志向の強まりで、バランスのとれた食事を取りたいニーズが強まっている。ところが、外食チェーンにおける取組は前掲の「大戸屋」以外では遅れ気味だ。

 

かつての「オリジン弁当」は現在よりも惣菜が充実しており、多少単価は高いが、栄養バランスを重視する人は積極的に利用していた。だが、オリジン弁当店舗には飲食スペースがなかった。コンビニ併設型の場合、イートインで食べることができたが、スペースが狭く、安っぽいため、せわしくて味気なかった。

 

これからは、ずばり欧米に見られる「デリ(デリカテッセン)」のように惣菜やおかずを自分で選び、その場で食べられる業態が求められていくだろう。実は日本でも都市部ではデリは以前より存在する。しかし、その多くは飲食スペースが狭く安っぽい。今後の差別化のコンセプトは、「落ち着いた空間で栄養バランスのよい食事を手軽に取れる」だ。

 

4.子連れヤンママ世帯にはカフェレストランの雰囲気を提供する

 

麻布十番にある「カフェ ラ・ボエム」というイタリアンレストランがある。ここにランチタイムに行くと、子連れママさん達のたまり場になっていて驚く。この店の近所にファミレス大手の「ジョナソン」があるが、そちらにはこうした子連れママさんはほとんどいない。従来のファミレスは、実はファミリー層にも避けられているのだ。

 

ファミレスの食事は、工場生産の冷凍食材を温めただけのものが多く、味が今一つである。また、内装はいかにもファミレスといった画一的なものが多い。

 

これに対し、「カフェ ラ・ボエム」は中世風の内装のカフェレストランでファミレスではない。料理は手作りで、ランチメニューなら前菜、パスタ、デザート、スープとソフトドリンクは飲み放題で1200円程度と価格は手頃だ。

 

子連れヤンママ世帯だからファミレスに行くと思い込んでいるのは、恐らくファミレスの経営者だけではないか。彼女たちは子連れだからといって従来型ファミレスやイオンやイトーヨーカドーのフードコートばかりに行きたいわけでは決してない。「子連れヤンママ向けのレストラン=ファミレス」というステレオタイプも捨てた方がよい。

 

 

シニアシフトの衝撃

 

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