シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第93

 

サンケイリビング行政メディアは一番信頼され、よく読まれる

 

シニア向けの情報を発信するメディアとして有効なのは、市町村が発行する広報誌などの公的メディアである。これらは、シニアが最も信頼をおいていて、よく目を通す媒体だ。郵便受けに投げ込まれても読まれずに捨てられる媒体がほとんどだが、シニアはこのような行政機関の広報誌だけは捨てずにじっくり読む傾向がある。

 

広告料を取って広告掲載している市町村の広報誌もあるが、一般には営利企業の利益に関わるような情報は制限される。こうした公的な広報誌には、いかにも売り込みという広告宣伝のようなものではなく、読んだ人が役に立つ情報として提供する工夫が必要だ。

 

また、役所の掲示板の張り紙や、そのそばに置いてあるチラシは結構よく見られる。行政機関にある情報だとシニアから安心感を持たれやすいからだ。市町村の交流センター、シルバー人材センター、公民館や体育館などの公的機関も、情報発信メディアとして考慮に入れておくとよい。

 

フリーペーパーは主婦層がよく読む

 

フリーペーパーは、タブロイド紙や雑誌の形態を取った、地域密着型の無料情報誌だ。イベント、タウンショップ、求人求職、住宅・不動産、グルメ・飲食店、ショッピング、演劇、エステ・美容、レジャー・旅行、各種教室など多岐にわたる生活情報を記事と広告で伝えるものである。フリーペーパーについているクーポンは「利用して得する」ものが多いので、主婦層は熱心に利用している。

 

日本国内では1000紙以上のフリーペーパーが発行されているが、シニア向けで代表的なのは、サンケイリビング新聞社が発行しているタブロイド判の「リビング新聞」、株式会社ぱどの発行する「ぱど」だ。

 

配布形態は、「ラックなどによる店頭設置」が45%で最も多く、「新聞折り込み」(36%)、「公共施設での配布」(35%)「宅配(ポスティング)」(33%)と続く。

 

フリーペーパーのクーポンには、それを使った人が、どの媒体を見て利用したかがわかる仕掛けがある。広告効果を測定できるので、市場調査と合わせて活用する企業も多いようだ。ただし、フリーペーパーは都市型メディアなので、利用は都市部に限定される。

 

多数のシニア会員がいる事業者の会員誌は隠れた有力メディア

 

多数のシニア会員をもつ企業では、会員誌を発行しているところもある。これをうまく活用すると、効果的にリーチできる。発行部数の多いところは次の通り。部数はすべて公称である。

 

(1)クラブツーリズム「旅の友」(無料)、300万部

(2)ゆこゆこ「ゆこゆこ」(無料)、126万部

(3)JR東日本「大人の休日倶楽部」(有料)90万部(ミドルとジパングの合計)

(4)カーブス・ジャパン「カーブスマガジン」(無料)、65万部

(5)いきいき「いきいき」(有料)、22万部

(6)KADOKAWA「毎日が発見」(有料)、11万部

これらの会員誌は、広告出稿やタイアップ企画も受け入れているので、他の事業者も活用できる。ただし、会員を有する事業の内容とイメージがかけ離れたものは、注目率が低くなるので、注意が必要だ。

 

旅行関連の会報誌であれば、旅行カバンや旅行グッズなどの広告は親和性がよい。フィットネス関連なら、化粧品、サプリメントなど、美容と健康に絡む商品がよいだろう。

 

麻布十番のみの市シニア層がよく来る「場所」もメディアになる

 

自由時間がタップリあるシニア層が好む場所、よく訪れる場所は狙い目だ。たとえば次のようなところである。

 

(1)百貨店……三越本店、高島屋本店、京王百貨店、松坂屋上野店、ジェイアール名古屋タカシマヤ、阪急うめだ本店、阪神百貨店、あべのハルカスなど

(2)演劇場……歌舞伎座、新橋演舞場、明治座、京都四條南座など

(3)講演会……自治体や、テレビ局、新聞社が主催するもの

(4)コンサート会場……東京文化会館、サントリーホール、オーチャードホール、東京芸術劇場など

(5)映画館……各シネマコンプレックス(平日昼間はシニアが多い)

(6)商店街……巣鴨地蔵通り商店街、麻布十番商店街、広尾商店街、神楽坂商店街など

(6)のシニアに人気の商店街などは、シニア向け商品のアンテナショップを出店するのに適しているだろう。巣鴨地蔵通り商店街は「おばあちゃんの原宿」として有名だ。

 

注意したいのは、シニアに人気の商店街といっても、各々商店街で客層が異なること。巣鴨は庶民的、麻布十番と広尾はやや裕福な雰囲気、神楽坂は以前よりも年齢層が若めになってきている。

 

参考文献:成功するシニアビジネスの教科書

 

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