日本経済新聞関西版 2015115

nikkei150115内閣府の2014年版「高齢社会白書」によれば、日本の総人□に占める65歳以上の人口の割合(高齢化率)は13年に25%を超え、25年には30%に達する見込みだ。こうした超高齢時代の土地活用術として注目を集めているのが、需要の大きな伸びが期待されるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。高齢者問題に詳しい2人の識者に、シニアビジネスの特色やサ高住の可能性などについて話を聞いた。

 

「3K不安」に注目

 

近年、多くの企業がシニアビジネスに参入するようになりました。シニアビジネスで難しいのは高齢者のニーズが多様なこと。同じ年齢でも家族構成や所得水準、健康状態などにより求めるものは大きく異なります。「高齢者」とひとくくりにするのではなく、多様な嗜好を見極めてビジネスを考えなければうまくいきません。

 

シニアが共通して抱えている「3K(健康・経済・孤独)不安」を解消するビジネスには大きな可能性があります。特に高齢者向けの住宅や医療・介護サービスヘのニーズは今後一層高まっていくと見込まれ、社会的にも重要な分野。

 

中でもバリアフリーの住まいで安否確認や生活相談などのサービスがあり、高額な入居一時金が必要なく、年金で支払える程度の家賃で利用できるサ高住は今後大きく伸びていく市場でしょう。ハウスメーカーなどは新たに専業会社を立ち上げるなど熱心に取り組んでいます。

 

土地オーナー自身も高齢者である場合が多いと思います。有効活用できていない土地をサ高住に切り替えてキャッシュが入る仕組みをつくることは、3K不安に対処する賢い方法の一つです。可処分所得が増えれば、選択肢も広がります。健康維持のためフィットネスに通ったり、友人と旅行したりするなど、事業で得た収入で後半生をより豊かなものにできるでしょう。

 

長期的・安定的な収入源に

 

日本のシニア層の資産構造は「ストックリッチ・フロープア」といわれるように、不動産など流動性が低い資産が大部分を占めているのが特徴です。フローを高めるには、例えば所有している土地にサ高住を建ててサブリース(一括借り上げ)などにすると、長期的・安定的に家具収入を得ることが可能になります。

 

建設資金をオーナーが負担することで課税対象資産を減らせるため、相続税対策にもなり、土地というストックをフロー化することで経済的にも心理的にも余裕が生まれるでしょう。

 

経済的な利点ばかりではありません。サ高住の事業に関わることで医療・介護など高齢社会の課題について主体的に学び、備える機会が得られます。将来的に自分が入居するつもりで事業内容を考えれば、ハウスメーカーなどの事業者に、入居者の視点で貴重なアドバイスができ、より高齢者のニーズをとらえた住まいとサービスを提供できるでしょう。

 

スマート・エイジングを目指す

 

私たち、東北大学では「スマート・エイジング」を提唱しています。年を重ねるにつれて、より賢く成長できるという考え方です。

 

最近は情報化が進んだことで多くの情報を賢く活用するスマート・シニアが増えています。将来に備えて有料老人ホームの的に足を運ぶ高齢者も多いようです。

 

働き盛りの現役世代は仕事や子育てに忙しく、老親の問題について知識や理解が不足しています。当事者になって初めて分かることは多いものです。かくいう私も母親が脳梗塞で倒れてから老親の介護などについて本気で考えるようになりました。

 

事が起きなければ分からない。しかし、事が起きてからでは違い。だからせめて事が起きる前に知識だけでも得ておくことが大切。それがスマート・エイジングヘの第一歩です。

 

 

参考文献:スマート・エイジングという生き方