IT化で見えてくる意外なもの

スマートシニア・ビジネスレビュー 2008年4月11日 Vol. 116

osaifukeitai3月29日から東海道新幹線に乗るのに、
従来の紙の切符の代わりにICカードで乗れるようになった。

これによるメリットは、ネットや携帯電話で事前に予約しておけば、乗車前に紙の切符を入手する必要なく、乗車できることだ。

私のような出張の多い人間にとって、これは大変便利である。
航空機では当たり前になっているICカードでの乗車に
ようやく新幹線も追いついた。

この機会に、さらに利便性を上げるために、
ICカードすら使わずに携帯電話を使って乗車できるように
携帯の機種変更をした。
「おさいふケータイ」という機能つきのものだ。

早速、名古屋への出張機会に使ってみた。
JR在来線の池袋-東京間、東海道新幹線の東京-名古屋間を、
何と携帯電話だけで見事に乗車できた。

ますます多機能化する携帯電話に
お金の機能まで持たせるのはリスクが大きいと思い、
これまで「おさいふケータイ」の利用には否定的だった。

しかし、実際に利用してみると、その利便性は予想よりも大きかった。
一方で紛失時のリスクは最小化されていることがわかり、
一気におさいふケータイ「否定派」から「肯定派」に寝返ってしまった。

桜の季節の4月は、旅行の季節でもある。
JRの駅で例によって大勢のシニア客に出くわした。
しかし、前記の新しい”仕掛け“を知らない多くのシニア客は、
みどりの窓口の長い行列で長時間待たされていた。

新しい“仕掛け”のおかげで、
私は、この長い行列に並ぶことなく、
一直線に改札に向かうことができた。
だが、改札に向かいながら、10年ほど前に流行した
「デジタル・デバイド」という言葉を思い出した。

デジタル・デバイドとは、パソコンやインターネットなどの
情報技術(IT)を使いこなせる者と使いこなせない者の間に生じる、
待遇や貧富、機会の格差のことをいう。

若者や高学歴者、高所得者などが情報技術を活用して
ますます高収入や雇用を手にする一方、
コンピュータを使いこなせないシニアや
貧困のため情報機器を入手できない人々は、
より一層困難な状況に追い込まれるといわれる

いわば、情報技術が社会的な格差を拡大する現象ともいわれる。
だから、シニアこそ率先して携帯電話やパソコンなどの
ITを使いこなせるよう努力すべし、自助努力が必要だ、
という意見もある。

シニアがパソコン教室に通い始める理由のひとつに
「世の中の流れに遅れたくない」というのがある。
会社に居たときは黙っていても
会社から自動的に情報が与えられた。

しかし、退職すると、自分で何もしなければ
何の情報も得られなくなる。
会社依存型の生活スタイルを
自分中心型に切り替えるという意味で、
ITの習得は大きく役に立つと思う。

一方で、私が気になるのは別のことだ。
それは、JRがICカード化などの“仕掛け”の導入によって、
本来の窓口サービスの質を改善しないのを
“ごまかしている”ように見えることだ。

民営化されてからは国鉄時代のような
「列車に乗せてやる」的な横柄な態度はさすがになくなったものの、
JRの窓口サービスにはまだまだ改善すべき点が多いと思う。
これは航空機の窓口サービスと比べれば明らかだ。

その代表は「窓口で客を長い行列で待たせて当然」という姿勢だ。
特に4月は新入社員を窓口業務に当らせることが多く、
稚拙な対応で平気で客を待たせているのが目に付く。

顧客との直接の接点である窓口業務こそ、
本来ホスピタリティにあふれた経験豊富なスタッフ
(必ずしも年が上であることが条件ではない)が当るべきだろう。

新入社員を脇に座らせて熟練社員の”技“を盗ませるのが
本来のスタッフ教育のあり方だと思うのだが、
民営化されたとはいえ、やはり独占企業の弊害なのか。
顧客目線ではなく、自社の都合で
業務を組み立てているとしか思えない。

こんなことをいうと、利便性につられて
携帯電話の機種変更までした自分が、
実はJRの都合にうまく乗せられただけの
ような気もして面白くない。

新幹線切符のICカード化自体はいいことだと思う。
また、シニアの人も食わず嫌いをせずに、
ITの活用など新しいことにどんどん挑戦して欲しいと思う。

しかし、ITを使った新しい“仕掛け”が、
顧客の利便性向上のためではなく、
自社の不都合を覆い隠すためでないことを希望したい。

 

●参考情報

デジタル技術の逆説
2003年12月8日 Vol.40

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