ちょっと一息 2012710

smart_ageing_way2新潟県の見附市役所にお勤めの金子英子さんから新著「スマート・エイジングという生き方」の読後の感想をいただきました。

 

読んでいて私自身も思わず頷いた部分がありましたので、ご本人の了承を得て、次に原文をそのままご紹介させていただきます。

 

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最近読んだおすすめの本の紹介です。

 

『年を重ねるのが楽しくなる![スマート・エイジング]という生き方』(扶桑社新書)

 

本書は、脳トレで有名な川島隆太氏と、高齢社会研究とシニアビジネスの先駆者である村田裕之氏の共著です。

 

読んでの感想。

まず全体に、自分や周囲の人の、年を重ねることによる変化を受け止めることが楽になる本だと感じました。

 

エイジングとは変化することであり、一般に言われているアンチエイジングという言葉は、経年変化を否定すること、つまり生きることを否定する意味合いにつながるという、冒頭の記述にまず納得。

 

脳科学の視点と併せて、運動その他の具体的な加齢への対応方法と実践した結果などが書かれており、根拠を示しながらエイジングへの対応方法を考えさせる、素人にもわかりやすい本でした。

 

本書にあるような、認知症を改善する学習療法や介護予防につながる対策についての研究が進んでいると知ることは、自分の老いに対する不安を軽減してくれることにつながります。

 

しかし一方、素朴な疑問として、この高齢化が進んでいる社会の中で、こうした「変化への対応」のための知識、平たく言えば介護予防のための知識が、必ずしも常識となっておらず、実際に対策に取り組む人はさらに少ないという現状とのギャップが、むしろ不思議に感じられます。

 

実際には、本の中にも書かれているように、新しいことを始めようとしても、そう簡単に他人が受け入れることはない、というのが現実です。例えばウォーキングに興味のない人に、車に乗るより歩く機会を増やすという行動変容を起こさせるのがいかに難しいかは、私も日々の仕事の中で見聞きし、実感している訳です。

 

人間は、身体が実際にどこか悪くならないと、健康にいいと言われても、なかなか新しいことを始めようとはしないものです。その点、運動に興味のない人にも行動変容を起こさせるような社会的技術については、まだまだこれから進化させていく必要があるのだと感じました。

 

現在、勤め先の市では、健康基本条例と歩こう条例という2つの条例を施行し、スマートウェルネス推進(健幸長寿社会の推進)に取り組んでいる訳ですが、街をハード的に整備したり、変化させていくということ以上に、人の意識や行動を変化させるのは難しいと思います。

住んでいるだけで歩きたくなるまちづくり、自然に健康になるまちづくりに取り組む上でも、参考にさせていただきたいと思います。

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私は金子さんの感想のなかで、「実際には、本の中にも書かれているように、新しいことを始めようとしても、そう簡単に他人が受け入れることはない、というのが現実です。例えばウォーキングに興味のない人に、車に乗るより歩く機会を増やすという行動変容を起こさせるのがいかに難しいかは、私も日々の仕事の中で見聞きし、実感している訳です。」という言葉が、日々厳しい現実に直面されている方の生の声として心に響きました。

 

人間は頭で理解しているつもりでも、自分が痛い目に合って、我が事にならない限り、本気で動かない。

 

残念ではありますが、これが人間の行動原理の一つであることは否めません。かくいう私も偉そうなことを言うつもりはありません。拙著「親が70歳を過ぎたら読む本」を書いたのも、自分の母親が脳こうそくで倒れ、自分を含む家族に具体的に不具合を生じるようになって初めて、介護状態にならないこと、つまり予防の大切さを骨身に沁みて理解したのです。

 

それを実行すれば、身体によい、健康によい、世の中によいと思われることは沢山あります。しかし、それを本気で実行するのは、やらなければ死んでしまう、やらなければクビになる、などの本当に切羽詰った時ではないでしょうか。

 

「運動に興味のない人にも行動変容を起こさせるような社会的技術」というのは、既存のものでは、保険商品のセールスがそれに当たるかもしれません。保険に加入しておかないと、何かあった時に大きな出費になりますというセールストークは、一種の脅しであり、脅しは行動変容を起こさせるような社会的技術の一つと言えましょう。

 

しかし、本来、こうした脅しではない、自然と予防活動に向きたくなる「前向きな気持ちになる社会的技術」のようなものこそが必要なのでしょう。

 

金子さんの感想を拝読してそんなことを思いました。