良い介護施設の見分け方(前篇)

先見経済10月15日号 連載 親と自分の老い支度 第9回

20111015senken元気なときと、身体が不自由になったときではニーズが変わる

 

前号で説明したとおり、本来、親が元気なうちに、本人の希望する老人ホームや介護施設の候補を選んでおき、いざ入居が必要になったときに、入居できることが最も望ましい形です。実際、いくつかの有料老人ホームでは、入居手続きはしているものの、すぐには入居しない、つまり将来の移り住み先を予約購入している人もときどきいます。経済状況が許すなら、これは理想的でしょう。

しかし、心身ともに元気なときと、身体が不自由になったときとでは、必要なものや希望するものの優先順位が変わってきます。自分のライフステージが変われば、ニーズも変わるので、消費行動も変わるということです。このため、元気なときに「これが自分の入りたい理想のホーム」と思っていたものが、身体が不自由になると変わる可能性があります。

だからと言って、親が元気なときに老人ホームの情報収集を行なう意味がないかと言えば、そうではありません。老人ホームは、一般に高価で何度も買い直すことができない買い物ですので、どういう商品なのかを詳しく知っておくことは、決して無駄にはなりません。なぜなら、こうした情報収集活動は、身体が不自由になれば、ほとんどできなくなるからです。

 

もう一度やってくる介護施設を探す時期

 

一方、元気なときには老人ホームや介護施設などに入居するつもりはさらさらなく、仮に介護が必要な状態になっても、自宅で配偶者や子供が面倒を見てくれるものと思っている人も結構います。元気なときには、自分の将来がどうなるかの実感は湧きませんし、将来自分が大変な状態になることを自分自身ではなるべく想像したくないものです。また、特に男性は自分が要介護状態になったら、妻が介護をしてくれるものだと信じている人が多い傾向にあります。

ところが、現実には、配偶者が病気になったり、倒れたりして、その後要介護状態になり、亡くなるということが起こり得ます。すると、配偶者を亡くしたショックから引きこもりがちになり、一人暮らしになって周囲との交流が減ることで認知症が発症・進行していくということも、しばしば見られます。
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こうなると、本人(つまり、あなたの親)の介護が必要となり、本人と同居していてもしていなくても、何らかの世話のために手間や時間がかかるようになります。子供(あなたとあなたの兄弟姉妹)がすでに家庭を持っていれば、仕事や家事で忙しく、親の要介護度が重くなってくると、在宅での介護は難しくなります。

このような状態での介護施設探しは、施設に入居する親・本人の希望よりは、親以外の「家族の必要性」によって行なわれます。これが、親・本人が元気なときに探す場合と決定的に異なる点です。すると、忙しいこともあり、あまり介護施設探しに時間をかけられないことから、「毎月の支払いが可能で、まあまあの施設ならいいや」と、あわてて決めがちです。

しかし、前号で説明したとおり、あなたや家族があわてて探して入居を決定すると、契約条件の詳細な確認が不十分になり、入居後のトラブルが多くなりがちです。そこで以降では、最低限の見学で、よい介護施設を見分けるポイントを今号と次号に分けてお伝えします。なお、前号で説明した評価ポイントは、ここでは省きます。

 

先見経済1110_2-2最低限の見学で、よい介護施設を見分けるためのポイント

 

[1]日常受診する医療施設が近くにあるか?

介護施設の場合、入居者の医療依存度は比較的高く、受診の機会も多くなります。このため、医療施設が近くにないと、スタッフの付き添い負担が大きくなり、スタッフ数が少ない施設だと対応が悪くなります。また、入居者の健康管理や往診をしてくれる協力医療機関も近くにあり、在宅医療支援診療所であることが望ましいです。第1章で説明した「医療機関との連携」の実態をよく確認することです。

 

[2]建物は「コンバージョン」でない新築物件か?

コンバージョンとは、既存の施設・建物をリフォームして用途転換する手法のことを言います。価格の安い有料老人ホームには、古くなった会社の独身寮などをコンバージョンしたものが結構あります。コンバージョンが活用される理由は、中古物件のリフォームのため、建設コストが安く済み、それゆえ施設オーナーからの借り上げ賃料をディスカウントできるメリットがあるからです。しかし、コンバージョンされた建物には、介護施設としての機能が不足していたり、バリアフリー化が難しかったりする場合があるので、要注意です。見学時によく確認しましょう。

 

[3]ホームの規模は70室(床)以下か?

ホーム運営者の立場では、一般にスケールメリットを出すために、ホームの規模を大きくする傾向があります。しかし、入居者の立場では、ホーム規模が大きいと細やかな配慮をなされなくなり、住まいとしての雰囲気も保てなくなります。三〇室以下のホームでも立派に黒字を出している優れたホーム経営者もたくさんいます。

 

[4]廊下の両側に居室が配置されているか?

土地形状の制約やコンバージョン物件の制約で、廊下の片側だけに居室が配置されていることがあります。こうしたケースでは、居室への動線(廊下の長さ)が長くなり、スタッフの移動距離が増え、スタッフへの負担が増して、入居者への配慮が不足がちになります。特にスタッフ配置が少ない低価格型の施設では、入居者に目が届きにくくなります。

このため、居室への動線を長くしないために廊下の両側に居室が配置されていることが望ましいのです。ある運営会社では、介護職控室(ケアステーション)からの廊下の長さを十数メートル以下としています。

 

[5]介護職控室(ケアステーション)の位置は適切か?

介護職控室は、各階の中心で食堂とフロア全体が見渡せるところに設けるのが望ましいのです。その理由は、限られた人数のスタッフで入居者を効率的に介護するために、見守りやすく、動線を短くするためです。

介護職控室がフロアごとになく、特定のフロアにしかないホームもしばしば見られますが、これだと介護スタッフに多くの負担がかかります。介護職控室の配置は、介護棟全体の設計思想が透けて見えるところですので、ホーム見学の際は、真っ先に確認してみてください。

 

[6]浴室は各居住フロアにあるか?

浴室は一か所に集中しているのではなく、各居住フロアに分散して設置されているのが望ましいです。機械浴室は入居者約四〇人に一台は必要で、集中配置もあり得るのですが、一般浴室は約二〇人に少なくとも一か所、各フロアに一か所設置がベストです。これらの理由は、入居者の要介護度が重くなった場合、入居者の移動とスタッフの移動介助の負担を軽減するためです。


先見経済を発行する清話会のご好意により記事全文を掲載しています。

参考文献:親が70歳を過ぎたら読む本

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