2013910 シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第78 

図表12025年、高齢者のネット利用率は飛躍的増加

 

最近、街なかでスマートフォンを操作している高齢者の姿に出くわすことが多くなった。実際、年齢別インターネット利用率はここ10年間で高齢者の伸びが最も顕著である。

 

利用者が増えている理由は、①ネットを使わなかった人が利用するようになったことと、②若い時代に使っていた人が年を取ってもネットを利用し続けていることだ。このペースでいくと2025年の高齢者のネット利用率は飛躍的に増えることが予想される。

 

図表1は女性人口と要介護人口の数だが、男性も同じような推移をたどる。そこにネット利用率の予測を合わせてみた。例えば83歳では要介護者とそうでない人の割合が50%ずつ。そしてネットの利用率は45%に達する。この数値はほぼ50%であり、IT機器普及の観点から言えば、ほとんど普及段階といってよい。つまり、高齢者においてもネット利用が当たり前の時代になるということだ。

 

転換期を迎える小売業

 

すると流通業界において高齢者のネット通販利用が劇的に増えることが予想される。現在、高齢者の通販の利用と言えば、折り込みチラシやテレビ通販の利用がせいぜいだが、それがネットにシフトしてゆく。

 

シニアがネットをどんどん使うようになれば、小売業は転換期を迎える。百貨店やスーパーのように店頭販売が主流の小売業は今の業態のままでは、シニア顧客は離れていくことだろう。

 

これに対し、イオンやイトーヨーカドーなどの大手スーパーでは、ようやくネットスーパーに本腰を入れるようになってきた。だが、サービス形態は従来のウェブが主流。これだとパソコンユーザーでないと利用できず、シニア利用者はごく一部にとどまっている。

 

一方、今後シニアが使うデバイスの主流はタブレットになりそうだ。スマホは画面が小さいし、パソコンは設定や接続が面倒だからだ。こうした予想を見越して、一部の通販会社は来る2025年に向けて、着々と準備を進めている。例えば、ある通販会社のタブレット用画面は、きめ細かいナビゲーションシステムを備え、ワンクリックで商品が買える使い勝手のよさがある。

 

二極分化するシニアのライフスタイル

 

私は今後シニアの生活スタイルは二極分化すると考える。一つは「超スマートシニア」とも呼ぶべき高齢者の出現だ。ちなみに、この「スマートシニア」というコンセプトは、私が14年前に提唱したもので、「ネットを縦横に活用して情報収集し、積極的な消費行動を取る先進的な高齢者」のことだ。

 

「超スマートシニア」は、パソコンやタブレット、スマホなど複数のデジタル機器を使いこなし、要介護状態にならないための種々の予防策を講じ、健康寿命を延ばすことだろう。

 

そして、仮に要介護状態になっても、情報機器を探り、自宅や老人ホームなどに居ながらにして、欲しいモノやサービスを受けることだろう。自分一人での移動が不自由なこと以外は健康時と同じ機会が得られる。これが「従来の高齢者」と「超スマートシニア」との大きな違いである。

 

これに対し、もう一つは、デジタル機器の利用に抵抗を示す高齢者。この人たちは、自身が要介護状態になったとき、超スマートシニアに比べて、周囲の人の手を借りなければならず、不自由極まりない。何よりも健康な時にあった多くの機会が失われることになる。

 

ネット利用者が少数派の時代は、「ネットなんか使えなくても自分は何の不便も感じない」と思い込んでいる高齢者が多い。現在でも私の身近にいる70代以上の人にはそうした傾向が強い。

 

しかし、2025年には団塊世代の最年少者が75歳を超え、後期高齢者になる。この時代には、高齢者でもネット利用者はもはや少数派ではない。ネットによる情報機器が使えるのと使えないのとでは、毎日の生活における自由度に大きな差が出ることになる。

 

今後高齢者の仲間入りをする人は「従来の高齢者」と「超スマートシニア」のどちらを選ぶだろうか?答えは明らかだろう。商品・サービス提供側の企業は、こうした点に今から留意しておく必要がある。

 

 

シニアシフトの衝撃