スマートシニア・ビジネスレビュー 2013年1月29日 Vol.191
ネットスーパーもまもなく普及期に入る—そんな予感が現実化しつつあることを感じました。
つい先日訪れたスーパーのカスミによるネットスーパーがそれです。現在会員登録受付キャンペーン中で配送開始は2月6日からとのこと。
チラシを見て“はっ”としたのは、なんと一回の買い物2千円(税込)以上で配送料無料なのです。
ネットスーパーが登場したのは2007年頃。ただし、当初はローカルな地元密着のスーパーが大半でした。それが昨年頃からイトーヨーカドーやイオンなどの大手も本格展開を始めています。しかし、各種調査によれば、人口当たりの利用率は最大でも20%程度と低いのが現状です。
ネットスーパーの利用率が低い4つの理由
利用率が低い理由は、①配送料がかかるので利用にためらいがある、②ネットスーパーの画面インターフェイスが使いにくい、③ネットスーパーの存在を知らない、④パソコンを使えない、または使いたくない、などが主なものです。
理由①については、現状では一回の注文につき、大手のイトーヨーカドーでは4千円以上、イオンでは5千円以上の買い物で無料。言い換えれば、最低これらの金額を注文しなければ配送料がかかります。この2社以外の他社でも、買い物5千円以上で配送料無料というところがほとんどです。
今回のカスミによる「買い物2千円で配送料無料」は、「ネットスーパーは配送料がかかる」という心理的しきいを下げるものと思われ、今後の動向が注目されます。
理由②については、パルシステムや生協のような紙のカタログで注文し、毎週数回自宅まで届けてくれるサービスの方が利便性がよいと感じている人が多いようです。
実際スーパー各社のネットスーパーの画面を見ると、閲覧商品の画像が見にくく、買い手の購入意欲をそそらない画面がまだ多く見られます。
もっとシニアがよく接触するメディアに重点的に告知すべき
一方、理由③が障壁の人には、さまざまな手段を通じて、告知を強化することが必要でしょう。私は今回実際のカスミの店舗を訪れて、会員登録受付キャンペーンの存在を知りました。
しかし、実はこのスーパーに来ることはあまりないので、たまたま来店しなければ存在を知ることはまずなかったでしょう。
仮にシニア客をターゲットにするなら、新聞折り込みチラシや自治体発行の広報誌などに情報を掲載すれば、もっと周知されるでしょう。特に、自治体発行の広報誌はシニアによく見られます。
シニアには、スマホよりもタブレットベースの使いやすいデバイスが不可欠
理由④については、実は該当するのは、大半がシニア客です。今後人口のシニアシフトが徐々に進むと、すでにパソコンを利用している世代(団塊世代よりも若い世代)は、高齢になっても多くがパソコン、ネットを使い続けるでしょう。
一方、現段階でパソコンを利用しない高齢者が、新たにパソコンとネット利用の仕方を習得し、ネットスーパーで自在に買い物をできるようになるのは、相当しきいが高いと思われます。
拙著「シニアシフトの衝撃」でも述べているように、こうした高齢者に対しては、現状のパソコンではなく、タブレットをベースとした、操作がもっと簡単でわかりやすく、字が大きく、誰でも気軽に利用できるインターフェイスをもったデバイスが有用でしょう。
このように現時点では、まだ課題はあるものの、今回のカスミのような試みが積み重なることで、利用者に役立つサービスとして普及していくのでしょう。
今後の企業各社の努力に一層期待をしたいところです。
シニアシフトの衝撃 超高齢社会をビジネスチャンスに変える方法
カスミ ネットスーパー