知縁型商品で知的新陳代謝を促す

保険毎日新聞 連載 シニア市場の気になるトレンド 第4回

■南極点2009年1月退職後の生活では「知縁」が重要

 

最初に挙げるのは「知縁」というキーワードである。この言葉は「知的好奇心が結ぶ縁」という意味で、2002年に私が日本経済新聞で初めて提唱したものだ。

 

縁(えん)には順番がある。1番目の縁は「血縁」、家族・親族の縁。2番目は「地縁」、住んだことのある場所の縁。3番目は「社縁」、もしくは「職縁」で、会社・仕事関係の縁。この知縁は第4番目の縁ということができる。

 

私は、退職後の人生では知縁がとても大切なつながりになると考えている。現代は核家族が多いので、家族のつながり(血縁)が弱くなっている。男性サラリーマンの多くは、現役時代は会社と家の往復で過ごす。その結果、地域とのつながり(地縁)は薄い。

 

一方、現役時代は会社とのつながり(社縁)が一番強い。退職しても、しばらくはOB会などでつながりが残る。ところが、それも時間の経過とともに次第に薄れてくる。

 

そこで、知縁という知的好奇心で結ばれた関係がますます重要になってくる。知縁型商品とは、それを商品販売やサービス提供に応用しようという考え方だ。

 

河口湖イベント 058テーマ型旅行は知縁型商品の代表

 

旅行会社クラブツーリズムのテーマ型旅行は、知縁型商品の代表だ。この会社のスタートは、旅行会社のユーザーを対象に「クラブ1000構想」から始まった。いろいろなテーマごとのクラブを1000つくり、顧客を囲い込むという考え方から生まれた会社だ。

 

初期には実際のクラブを多く誕生させたが、現在は約300種類のテーマ型旅行の販売という形に変わっている。クラブツーリズムという名称は、もともと旅のテーマごとにクラブを組織化し、同じ関心をもつ同好の士が一緒に旅をするというコンセプトだったからだ。

 

しかし、メンバー固定化による閉塞感を避けるために、クラブというメンバーが固定しやすい形態ではなく、あくまで特定のテーマごとにオープンな参加が可能な形態に進化させている。

 

この旅行商品のポイントは、あるテーマを打ち出すと、それに対して興味を持った人たちが集まってくることだ。興味を同じくする人たちが集まるので、共通の話題が多く、話もしやすい雰囲気になる。

 

食事を一緒にすれば、当然盛り上がりやすい。親しさが湧くことで、「また一緒に行きたいね」となるわけだ。そのような流れで、リピーターが増えていく。

 

「知縁型店舗」でコト消費からモノ消費へ展開する

 

このように、知的好奇心の似た者どうしが集まるのが知縁型商品の特徴だ。旅行の他に、カルチャーセンターの教室への参加者どうしのつながりも知縁といえる。しかし、多くの場合は教室の授業が終わると、通常そこで関係は終了する。せいぜい、講師がやっている別な教室に通うというレベルだ。

 

これまでのカルチャーセンターは、多くがその場限りのものだった。しかし、最近ではカルチャーセンターを知縁の入り口にして、そこから発展的に購買活動につなげようという意図をもった動きが出て来た。この代表例が、イオン葛西店の「GGモール」だ。

 

カルチャー教室を開催するだけでなく、併設のいろいろなショップで、その教室に関わる本、楽器、手芸用品、アクセサリー、ペットなどを販売している。好きなものどうしが集まって勉強し、さまざまな情報交換をすることで話が盛り上がる。

 

その結果、「こんなことをしたい」「こんなものが欲しい」となると、その受け皿となる店が併設されているので購買に結びつきやすくなるのだ。

 

このように、「受け皿がすぐそばにある」ことが、コト消費からモノ消費につながりやすいポイントだ。教室だけだと、その場では盛り上がっても、すぐに忘れてしまう。「鉄は熱いうちに打て」を具現化するためには、教室と各ショップが同じフロアのなるべく近い所にあることが重要だ。

 

ネット上で先行していた知縁型店舗が実店舗に広がってきた

 

ネット上ではアマゾンなどが、以前からこのような知縁型店舗を提供していた。たとえば、「終活」で本を選ぶと、墓の選び方、お寺、葬儀、花、エンディングノートなどの関連した本がリストされる。このような商品提案形態を、実店舗でも実現するところがようやく増えてきたのだ。

 

実店舗でもこうして関連商品を互いにすぐそばに置くと明らかに売れやすくなる。買い手の知的好奇心を刺激され、商品がすぐ目の前にあることで購入したい気持ちが強くなるからだ。また、「こんなものまであるのか」という気づきが生まれ、売場そのものが知的好奇心でつながる商品生態系的な陳列になっていることで、購買行動が促進される。

 

楽器好きな人は、楽器、楽譜、練習用の貸しスタジオ、CDなどの関連商品に対する興味がある。そこに集う人たちが、交流できるスペースがあれば、そこが知縁を深める基地にもなる。

 

現状の知縁型店舗はここを改善すべき

 

タンゴ・バー、ハワイアン・レストラン、フォーク・バーなどのテーマがはっきりした店では、生演奏を主体としたエンターテインメント・サービスを行っている。こうした店は、タンゴ好きやハワイアン好き、フォーク好きが大勢集まってくる知縁型店舗になっている。

 

ところが、こうした店の食事は、残念ながら概して質が低い。明らかに冷凍食品を活用した食事が多く、せっかく質の高い生演奏を聴けても、これと似合わない質の低い食事では本当の顧客満足は得られない。

 

実は冷凍食品でも最近は十分に舌を満足させるおいしいものも増えてきている。しかし、低質な食事を出している店は、そのような新しい商品の存在を知らないのだろう。最新のフローズン型の冷凍食品なら、かなり手作りの雰囲気に近い。とはいえ、できれば冷凍食品だけではなく、本格的な食事を提供する方が、顧客のリピーター率は格段に上がるだろう。

 

六本木に「アビーロード」というビートルズのコピーバンドが登場する店がある。そこはビートルズというテーマの知縁型店舗になっている。この店の売りは、出演しているコピーバンドによる「本物のビートルズのような」迫力ある生演奏だ。

 

また、本物のビートルズの生演奏を聴いたことがない世代に対しては、ビートルズっぽい演奏を生で聴けるという楽しみを提供してくれる。ちなみに、この店の食事は先に挙げた例よりもかなりましだ。だから、また来ようという気になる。


参考文献:成功するシニアビジネスの教科書

 

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