ダイヤモンド社 経  201212月号 巻頭エッセイ

kei201212日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は、2012年現在、推計で24・1%に達した。この数値は世界一である。この「超高齢社会・日本」の動向は世界各国から注目されている。

 

私は、直近の2年間だけでも、欧米とアジア8か国で開催された国際会議やカンファレンスに何度も招待講師として招かれ、多くの海外メディアからも何度も取材を受けている。

 

彼らの共通の関心事は、日本の高齢化に伴う課題とその解決策について意見が聞きたい、というものだ。このように尋ねられる理由は、よくも悪しくも日本が高齢社会に必要なことの「ショーケース」となっているからだ。

 

年金などの社会保障の課題だけでなく、個人の健康や生活設計に対するニーズには「世界共通」のものが多い。だから日本をじっと見ていれば、自国の近未来の姿が見え、自国で課題が顕在化する前に対策を講じることができるのだ。

 

私は、高齢社会対策、特にシニアビジネスの面で、日本が世界のリーダーになれると真面目に考えている。その理由は、日本で揉まれたシニアビジネスが世界で通用するからだ。そのポイントは2つある。

 

第1に、日本では高齢化の課題が世界のどこよりも早く顕在化すること。これは裏返せば、シニアビジネスのチャンスが世界のどこよりも早く顕在化することを意味する。だから、常に世界に先駆けて商品化でき、いち早く市場に投入できる優位性がある。

 

第2に、シニア市場とは多様な価値観を持った人たちが形成する「多様なミクロ市場の集合体」であること。この「多様性市場」には、きめ細かな対応力が求められるが、日本の高度な集積化技術と、日本人の細やかな情緒感覚がこの対応力の源泉となる。

 

国連の定義によれば、高齢化率が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」という(21%を超えると「超高齢社会」というが、日本は2007年から超高齢社会になっている)。皆さんは、2030年までにアフリカや中近東を除く世界の多くの国が「高齢化社会」に突入することをご存じだろうか。

 

ますます混沌とする世界情勢のなかで、世界中で確実な構造的変化は「人口動態のシニアシフト」なのである。

 

したがって、日本で本格化した「企業活動のシニアシフト」は、これから他の国でも「人口動態のシニアシフト」につれて一定の時間差をおいて必ず起こる。特に高齢化の進む欧州では、近い将来間違いなく起こるだろう。

 

だから、日本企業は、いまのうちに切磋琢磨して、自社の商品・サービスに磨きをかけることだ。そうすれば、それらは、一定の時間差をおいて「人口動態のシニアシフト」に直面する他の国から必要とされるようになる。

 

他国に先駆けて超高齢社会を経験する日本は、シニアビジネスを通じて世界に貢献できるのだ。

 

参考:シニアシフトの衝撃(ダイヤモンド社)