認知症と身体の衰えを予防する

解脱2月号 特集 しあわせ家族研究室

解脱_2014年2月号_表紙介護が必要になるのは「認知症の発症」と「身体の衰え」が主な原因です。これらを防ぐためにはどのようにすべきでしょうか。ロングセラー『親が70歳を過ぎたら読む本』の執筆をはじめ、シニアビジネスのパイオニアとして知られる村田裕之先生に、最終回の今回は、「介護トラブルの根本的な予防策」をお聞きします。

 

認知症を予防する

 

認知症の予防には、①脳を活性化させる活動をする、②生活習慣病を避ける、③適度な運動をする、のがよいとされています。

 

①の方法のひとつが「学習療法」です。ここで言葉の定義を整理しておきます。運営主体の㈱くもん学習療法センターによれば、「認知症の人に対する脳機能改善を目的としたプログラム」を狭義の「学習療法」と呼び、健康な人の脳機能維持・認知症予防を目的としたプログラムを「脳の健康教室」と呼びます。狭義の「学習療法」は、これまでに全国1,200以上の介護施設に導入され、約12,000人の認知症患者の症状改善に大きな効果を上げています。また、「脳の健康教室」は、全国の自治体の約400の会場で、5,000人以上の人が取り組み、脳機能の維持、認知症予防に役立っています。

 

学習療法は、私が所属している東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授、㈱公文教育研究会、および高齢者施設を運営する社会福祉法人・道海永寿会の共同で開発されたもので、最近は海外からも高い関心が寄せられています。

 

解脱_2014年2月号_4-1学習療法は、次の2つの基本的な考え方をもとに行なう学習プログラムです。

 

①「音読・手書き・簡単な計算」を中心とする、教材を用いた学習であること

②学習者(認知症高齢者)とスタッフ(学習療法スタッフ)がコミュニケーションをとりながら行なう学習であること

 

学習療法は、原則2人の「学習者」と、1人の「支援者」との組み合わせで実施します。その理由は、教材の学習だけでも脳機能改善効果があるのですが、支援者が学習者と上手にコミュニケーションを取ることで、さらに改善効果が得られるからです。

 

学習療法の研究は、福岡県大川市にある社会福祉法人・道海永寿会(永寿の郷)と共同で、20019月から始まりました。参加した高齢者は70歳から98歳までの47人で、研究開始時点の平均年齢は82歳でした。研究の結果、学習療法をした人が、しなかった人に比べ、明らかに「前頭葉検査」の数値が向上し、脳機能が改善されるという結果が得られました。

 

そのうえ、まったく無表情だった人が、学習が進むにつれて笑顔が戻るようになり、さらにおむつに頼っていた人が尿意や便意を伝えることができるようになったり、ついには自分でトイレに行けるようになったりと、日常生活に大きな変化が表れたのです。

 

この学習療法を応用して、㈱くもん学習療法センターにより「健康な人」、「軽度認知障害の人」を対象に「脳の健康教室」が実施されています。まだ認知症にはなっていないものの、物忘れが増えてきたと思ったら、ぜひ最寄りの脳の健康教室に通うことをお勧めします。

 

筋力の衰えを予防する

 

2004年の「国民生活基礎調査」によれば、要介護状態になるきっかけの第1位は「脳卒中(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血)」、第2位は「高齢による衰弱」、第3位は「転倒・骨折」です。

 

脳卒中の予防法として一番いいのは有酸素運動です。最も手軽にできるのがウォーキングでしょう。有酸素運動は、血圧を下げたり、血中脂質の状態を改善したりするのに効果的です。

 

高齢による衰弱は仕方がないので、次に、転倒・骨折の予防策です。転倒の原因として、実際には複数の要因が関係していますが、原因の一つに加齢による「下半身の筋力低下」が挙げられます。

 

私たちの体は、歩く際に「大腰筋」と太ももの筋肉を使っています。大腰筋が弱ると、歩行時に地面からのつま先の高さが下がり、ちょっとした段差や小石などに「つまずき」やすくなります。こうした「つまづき」がきっかけで転倒・骨折すると、そのまま寝たきりになってしまう可能性が大きいのです。

 

したがって、「筋力トレーニング」によって大腰筋をはじめとした歩行に関わる下半身の筋力を維持・強化し、筋肉量を増やすことが転倒・骨折の予防になります。

 

筋力トレーニングは重要だ、という話をすると、高齢者の方からは「毎日ウォーキングをしているので大丈夫です」という返事が返ってくることがあります。

 

ウォーキングのような有酸素運動は、脳卒中の予防法としては一番いいのですが、筋肉量の低下を抑えたり増加させたりすることはできません。筋肉量の低下を抑えたり、増加させたりするためには、対象の骨格筋に対して負荷をかけることによって行なう筋力トレーニングが必要なのです。

 

最近は高齢者でも無理なくできる筋力トレーニングの機器やサービスが増えてきており、本人にやる気さえあれば、継続できる環境は整ってきています。各フィットネスクラブでも、高齢者でも取り組みやすい機器やプログラムを開発し、高齢者の利用を促しています。特に、㈱カーブスジャパンが運営する「カーブス」は、女性専用ですが、中高年を中心に、高齢者でも取り組みやすい筋力トレーニングプログラムとして人気を呼んでいます。

 

このカーブスはアメリカで開発され、世界60ヵ国でのべ430万人以上が利用している世界最大の女性専用フィットネス・チェーンです。2003年に私が日本で初めて紹介し、057月に1号店がオープンして以来、8年6か月で全国に1,393店舗(131230日現在)、会員数は61万人に達する日本一のチェーンに成長しました。

 

カーブスが人気なのにはいくつか理由があります。第1に、油圧式器具を用い、一人ひとりの体力に合わせて無理なく運動できる点。第21日わずか30分で効果が出るよう工夫されている点。第3に住宅地や商店街のそばに立地し通いやすい点。第4に鏡がないので自分の姿が気にならない点です。そして何と言っても、仲間ができやすく楽しい点です。

 

要介護状態にならないために、ぜひ、こうした最寄りの筋力トレーニング実施場所に足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

これまで介護にまつわる内容を4ヵ月にわたり紹介してきました。介護は将来的に誰にでも起こりうるできごとです。自分の近未来をイメージして、今日から、できることから始めてみましょう。

 

参考:親が70歳を過ぎたら読む本

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